行政書士と国民の権利利益の実現

ビザ在留資格の取次業務を行なっている行政書士。その制度の根拠法たる行政書士法が改正され、今年令和3年6月4日から施行されます。

改正内容は以下の通り
1 法律の目的に「国民の権利利益の実現に資すること」を明記
2 社員が一人の行政書士法人の設立等の許容
3 行政書士会による注意勧告に関する規定の新設

ビザとの関係でいうと、1の点に少し言及したいと思います。

まず、行政書士の業務は、本来的に国民の権利主張を代弁するようなものではないということです。

あくまでも行政に関する手続きの実施に寄与することを手段として、最終的に手続きの受益者としての国民の利益に資するという点を理解しないといけません。

だから、改正前まではあえて、「国民の権利利益」などの文言は外されていたのかなと思います。

また、今回の改正でも注意深く、「国民の権利」という文言が全面に出てこないような書き振りになっています。

これは結局何を意味するのかというと、「行政書士と弁護士とは違う」ということです。

行政書士の中には、例えば入管業務でも「権利」「人権」を全面に持ち出してくる人が少なくないです。

しかも、初めから行政側と対立構造にもっていき、「権利」「人権」だから許可すべきだという感じで。

私はそれは行政書士としてやるべきではないと思います。

なぜなら、行政書士の業務は、依頼者の負担を減らしつつ行政がスムーズに手続きを進められるように手助けすること、つまり、行政の望む資料等を迅速的確に提供するなど行政をもサポートすることが行政書士に求められることであり、行政と対立するべきではないからです。

行政と対峙し、「権利」や「人権」を主張するのはあくまで弁護士にお任せしましょう。

だから、入管業務で言うと、理由書などで「権利だから」「人権だから」ビザを許可すべきだと主張すべきではないのです。

もちろん、ときには「人権」を持ち出す必要性が発生することもあります。

でもそれは権利主張としての「人権」持ち出しではなく、行政側の裁量判断の中で、考慮事項のひとつとして「権利」「人権」性が含まれることを主張するのです。

そこでは、権利を振りかざすのではなく、行政が乗りやすいレールを敷いてあげることを意識しましょう。

それでも行政が頑なに手続きを不許可にする場合には、弁護士に任せましょう。

弁護士が国民の権利・利益の代弁者として、行政と対峙し、戦ってくれるでしょう。

しかし、腕のいい行政書士は、行政と対立構造になる前に、行政の乗りやすいレールを敷いて、スムーズに手続きを進めていただき、もって依頼者の申請を迅速に通すことが肝要なのです。

行政手続きは、争いになるよりも、通常の手続き内で済ませる方が圧倒的に早いです。

したがってその方が依頼者(国民)の利益になるということも忘れてはいけません。

そして依頼者の側からは、やたら「権利」「人権」を振りかざし行政と対立するような姿勢を見せる行政書士よりも、依頼者と行政とが一体となってスムーズに手続きが進むように調整する役目を自覚している行政書士を探してください。

ちなみに、そもそも外国人には日本に入国する権利、日本に在留する権利はありません。

これはどの国でも同様です。全世界的な公理です。

この点からも、ビザの申請で、権利や人権を全面に主張することはやるべきではないと理解してください。

<関連するリンク>
行政書士法(現行法)
https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=326AC1000000004

行政書士法の一部改正(令和元年12月4日法律第61号 令和3年6月4日から施行)
https://www.gyosei.or.jp/ni-20191204-2.html

次の記事

在留資格が気になる